育った家は元農家なので、ライフスタイルも農家のそれだった。
農家では、行事食など大がかりな調理をする際、
台所ではなく庭でやることが多い。
蕎麦やうどんを打つとか、
大量に採れた山菜のあく抜きをするとか、
正月の餅つきのためのもち米を蒸すとか。
現代の台所は明るくて設備もよく、
家の中でやってもよさそうな作業を、
今でも農家はわざわざ庭でやる。
「汚れるから、外なら片付けなくていいし」
などと言うけれど、たぶんそれが主要な理由じゃない。
屋外でやるこういう調理には、
「季節の恵み」「彼岸や正月」
といったイベント性、祝祭性があった。
小さな「ハレ」を楽しむために、
いつもと違う環境が必要だったのかもしれない。
それに、昔は家族が多かったから、
こういう作業はもっと大人数でやったに違いない。
昔の台所は暗くて狭かったから、
広々とした屋外で作業した方が安全で、効率もいいのだ。
実家でも、父が元気なときは、
「あまや」(広い庇のついた納屋)の軒先で蕎麦を打ち、
庭に設置した、一斗缶で作った竈を使って湯がいた。
外で作り、外で食べる料理は、
なぜだかいつもよりおいしかったし、楽しい思い出になっている。
父も母も、
「あの頃」の楽しい気持ちを思い出したくて、
家族の人数が減って、屋内の台所で調理できるのに、
わざわざ外に道具を持ち出していたんじゃないかな。
そんな私も、キャンプやバーベキューで、
外でごはんを作るのが好き。
家族の少ない時代なので、友達と一緒に、
それもまた楽しい思い出になっていくんだよ。
この春まで数年間、そんなこともできなかったけど、
今年はまたやってみたいな。
久しぶりだからやり方忘れちゃったかもしれないけど。