『ローマはなぜ滅んだか』

講談社現代新書、弓削達著

巨大帝国ローマがなぜ滅んだか、それを問うのは、
「当時の地中海世界(地理的意味ではなく)」と、
現代のグローバル化した世界との構造的疑似性にある、と著者。

「現代世界における支配と平和を考えるための絶好の思考実験場である」

アメリカ合衆国面積の9分の7しかなかったローマ帝国だが、
公道網の延べキロ数はほぼ同じ、というのはすごい。

しかしローマの主産業はあくまでも農業。
商工業の果たす役割は圧倒的に小さかった。
これは、陸上輸送のコストが高いためである。

実入りがいいのは土地所有者で、社会的地位も高い。
帝国の収入の一部は「戦争」(戦利品と賠償金)であった。

ローマ帝国の繁栄と見えるものは、きわめて限られた一部の支配層の、
かき集めた巨大財産から派生した仮現的現象に過ぎなかった。
共和制末期のローマ総人口120万の3割以上が国費依存の貧窮者だった。
これは支配層の浪費、退廃、倒錯と対照的である。

所有の不平等が大きくなることで、帝国は分解していく。
410年、ローマ陥落。
支配者(中心)が周辺(蛮人)にとってかわられた。

土地所有者の資産が自己増殖のように増えていくさまは、
世界の富の半分を一握りの超富裕層が握る現代とよく似ているし、
「中心」に見える「先進諸国」の人口/経済力が減少・凋落し、
新興国(次はアフリカ)にとって代わられる兆しとか、
なんだかいろいろ現代っぽい。

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