先日、川の合流点をさまよっていたときのこと、
写真を撮っていたスマホをふと見たら、
実家の母から2回の着信が入っていた。
今どき、電話をしてくるというのは相当緊急事態。
具合でも悪くなったのか?!とあせって電話したら、
いたってのんきな声の母。
「今日は寒いなぁ」
「さっき電話くれてたよね? どうしたの?!」
母、へへへと笑い、
「アタシさぁ、俳句始めてみたんだ」
「ええええ!!」
これにはけっこう驚いた。
テレビで毎日朝ドラをチェックし、演歌系歌番組を全部見て、
チコちゃんが大のお気に入りという、
文芸要素ゼロの生活をエンジョイしている母が俳句??
何が起こった??
「T姉さん(母にとっては兄嫁。兄はとっくに故人)のとこに、
この前ひさしぶりに行ったんだよ〜。
(コロナで親戚とも行き来を控えていた)
そしたら姉さん、最近俳句を始めたんだって!
いくつか聞かせてもらったが、いいもんだね。
94の姉さんが始めたっていうんだから、
アタシもできるんじゃないかと思ってさ」
ノリノリである。
次に飛び出したのが、
「けっこういくつも出来たんだよ。聞くか?」
2回もかけてきたくらいだから、聞かせる気満々である。
こちらは先ほどからぬかるみに足を取られながら、
だだっ広い河川敷をさまよっているのだが、
もちろんそんなこと母は知らない。
知ったところでどうだっていいだろうし、
「アンタはいい年して相変わらずバカじゃねーの」
などとドヤされるにきまってる。
なので、息をきらしながらも、
「いいねぇ。聞かせてみ?」
と言うしかない。ここで聞いておかないと、
二度と俳句なんて詠まないかもしれないし、
ゼッタイ機嫌を損ねてしまう。
こちらは堤防をよじ登ったり、
重機のわだちをのりこえたりしているからあんまり入ってこなかったけど、
聞いててわかったのは、
「575 にはなってるが、季語がなくて、なんなら少しおもしろい」
(だいぶ川柳だった)
でも、
「いいんじゃない? ちゃんと形になってるよ。
季語? そんなもん、思いついたとき入れりゃいいんだよ。
数打ちゃ当たるよ!」
と講評したら、すっかりご機嫌に。
大活字の辞書が見つからない(絶対捨てた)というので、
買ってあげる約束をし、
昨日出かけたついでに夏井いつき先生の俳句入門も買ってみた。
にしても、94歳に張り合って新しいことを始める85歳って、
別の意味で日本スゲーと思ったわ。