『よつばと! 15』で泣く

確定申告、やろうやろうと思ってはいるのだが、
集中力が15分しか続かず、気がつくとネットサーフィンしたり、
食べたくもないお菓子を作り出したりして全然進まない。
かといって仕事も手につかない、
そんな時に限ってむすこが『よつばと!』の15巻を買ってくる。

今度は3年近く空いたのかな? 
でも読者は辛抱強く待っている。
オビには、27か国と地域で読まれていて、
14か国語に翻訳されていると刷られている。
すごいな。この世界、ほかの国の人にもわかるのか!?
18年目にして15巻、にもかかわらず作品の中ではまだ1年が経過していない。

先に読んだむすことむすめが、
「今回は初めて回想シーンがあったよ」
というから、そろそろよつばの出生の秘密が明かされたのかなと思ったが、
全然違った。

全然ちがってたけど、その回想シーンに、
正確にいえばその直後のシーンに、
不覚にも泣かされてしまった、今回は。

うちの子たちはもう19と23ですっかり大人だけど、
だからこそ状況がカブったんだろうか。

なんというか、手のひらにすくった砂が、
指の隙間からさらさらこぼれていることが、
感触ではわかってはいても見えていなかったのが、
突然目に映ってしまった――そんな感じ。

むすめもむすこも、こんなに大きくなったのに、
小さい頃とまったく変わらずかわいい。
ずっと幸せだったけど、今が最高に幸せな気がする。
この瞬間をずっととっておければいいのに。
時間が止まればいいのに。
なんで時間を止めることはできないんだろう……

そう思うと、いてもたってもいられないような、
高い場所に駆け上っておんおん泣き叫びたいような、
そんな気持ちが温泉のように湧き上がってきて、
家族に見られないよう、こっそり陰気に泣いてしまった。

子供の成長は嬉しいことなのに、
幸せなことなのにどうしてこんな気持ちになるんだろう?

12歳くらいの頃、これと同じ気持ちになったことを不意に思い出した。

中学校からの帰り道、2歳くらいの小さい子供が、
鈴の音のようにけたたましい笑い声を上げて、
親と一緒に通り過ぎていったときのことだ。

なんて可愛いんだろう、と天使のような声を聞いて思った。
でもその気持ちの中には、
なぜか10%くらいの黒いインクがマーブル状に漂っていて、
そのインクはゆっくりと私の中で、
ごくごく薄い闇を広げていく。

闇はこう言っていた。

「可愛いよね、幸せだよね。
 だけど、いつか終わらなければならないんだよ」

なぜ、12歳の私にその声が聞こえたのかわからない。
干支を一巡して、大人に近づいた私にとって、
それは最初の「死」への準備だったんだろうか。

子供が育つということは、同時に、自分が老いるということだ。
時間を止めることは、誰にもできないんだなあ……

一緒にいられる時間がいよいよ少なくなってきたことを目の当たりにして、
少しうろたえてしまった今日だった。

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