店内から川が見える店を見分けるのは難しい。
でも、この店なら一目瞭然。
日本橋川に張り出したテラスが、日本橋の上もからよく見える。
色黒のシェフで有名な洋食の名店「たいめいけん」だ。
日本橋界隈で、川が見える店はこの店ともう一軒だけみたい。
ランチタイムは混むだろうから、はずした時間に訪問。
この店、有名店に珍しい通し営業をしている。
ランチよりディナーに近いような時間だったが、
それでも店内には数組の客がいて、もうビールを酌み交わしている。
テラスに出たいと所望すると、ベテランらしいホールの女性が、
「風強いですよ。いろいろ飛んじゃうからね」
と注意しつつ案内してくれた。
確かに、川風が吹き付け、紙ナプキンやメニュー表が危ない。
看板メニューのタンポポオムライスではなく、
海老グラタンを頼んでしばし待つ。
背の高いビルが建つという川向うには、
巨大なクレーンや重機がせわしなく働いている。
川面には、警戒船や台船など、働く船が行き交い、
その上にも重装備の働く人たちが乗っている。
だってこの川の上にかかる高速道路は、
これから撤去され、地下に潜るんだもの。
近隣の区画も再開発で大きく姿を変え、
水辺都市東京のメインとなる街になっていくんだもの。
グラタンは、ベシャメルソースがなみなみとかけられ、
海老もたくさん!
口当たりがよくて熱々で、川風の中でもおいしくいただけた。
レジの後ろに、都市計画の完成図が掲げられている。
「このお店も建て替えなんですか?」
「川向うが完成したら、そっちに入るんですよ」
では、このテラスで食べられるのも今のうちってわけか。
でも、空を遮るあの高速道路が撤去されたら、
今は川に背中を向けているビルも、
一斉に川の方を向くのかもね。
そしたら、日本橋を眺めながら、川風に吹かれ、
食事やお茶を楽しめる店が増えるのかもしれない。
期待。