床にモノを置かない

若い頃、洋画に出てくる部屋ってどうしてみんな素敵なんだろうと思っていた。
登場人物が貧しい若者という設定でも、
日本のアパートなんかじゃあんなにならない。
日本の家は狭くてモノが多いからダメなのかなぁ。

でも、だんだんわかってきた。
日本の室内がごちゃごちゃして見えるのは、
「広い平面」が圧倒的に少ないことが大きな理由だ。

出入口も押し入れも引き戸の和室には壁が少ない。
開口部の少ない欧米の部屋には壁がいっぱいある。
壁の少ない和室で暮らしていた頃、
ポスターを貼る場所にみんな困ったはずだ。

床の上もそう。ついモノを置いてしまう。
私たちは畳の上に直接モノを置くことに躊躇しない。
日本人にとって畳の上は「清浄な空間」だから。

畳がフローリングに変わっても、靴を脱いで暮らすスタイルは変わらないから、
やっぱり床にポンポン置いてしまう。
これが土足で入る部屋だったら、やっぱり違うんじゃないか。

次に広い面積を持つ食卓について言えば、
囲炉裏で食事をし、囲炉裏でくつろいできたDNAのせいか、
私たちは食卓にあらゆるものを持ち込んで置きっぱなしにしてしまう。
財布や携帯、薬に化粧品、本や新聞、おもちゃに手芸用品……

昔の、たぶん1965年より前の日本の家庭には、
モノなんてたいしてなかったから散らかりようがなかったのに、
生活習慣はそのままで、モノだけ大量に流入してきたせいで、
以降50年以上、片付けに苦労する羽目に陥ったんだねぇ。



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