ゆっくり話す人の価値

むすめと話していると、時々もどかしくなることがある。
むすめは一つひとつ言葉を選んで、考えながら話し、
話ながら考え込むタチ。
「だから……えーーと、だからね……」
といった具合に、単語と単語の間に長い時間が経過してしまうことがある。

「全部考えてからしゃべればいいんじゃない?」
と言ったことがあるが、
「それができないんだよ」。
自分でも悩んでいるらしい。
弁の立つ、頭の回転が速い人と話すと、
相手を待たせてしまうし、自分のスローペースが際立ってしまうもんね。

私はどちらかというと早口でダダダっと話す方なのだが、
なぜか私はこのタイプと相性がいい。
ゆっくり話す人のことを、不思議だなと思いつつもイラついたりはしない。
言い淀んだり、言葉を選んでいる相手を見ながら、
その間にお茶を飲んだりしてのんびり待てる。
セカセカした自分の時間を、相手が中和してくれることを、
無意識のうちに感じているからかもしれない。

先日、手がかぶれてしまい、初めての皮膚科を受診したのだが、
そこのドクターが「待てない人」だった。
愛想はいいし、何より歴とした医者なので、文句を言うのは筋違いかもしれないが、
私が症状を言い終わらないうちに、
「あー! それは〇〇だね!」
といってもうパソコンのモニターの方に向き直ってしまい、
「お薬一週間出しときますね~」。
正直、効く気がしなかった。
(以前も別の皮膚科で似たような軟膏を出されて全然効かなかった)

頭のいい人に時々あることだが、
相手がもたもたしていると、先回りして、
「つまり、それはこういうことだよね?」
と話をまとめてしまう。
相手を、相手以上に理解しているつもりだからなのか、
相手の話し終わるのを待っていられないからなのか。

その「つまり」がおおむね正しかったとしても、
これではコミュニケーションは成り立たないと思う。

ゆっくりでも、なかなか的確な言葉が出てこなくても、
その人自身が選んだ言葉が全部出きるまで待っていた方がいいんじゃないのかな。
「私はこう思う」
っていうのは、相手の話を全部聞いてからにした方がいい。

ゆっくり話す人は、トロいんじゃなくて、
誠実なんだと思う。
嘘や不正確なことを言いたくないがために、
言葉をゆっくり選んでいるんだ。
速さよりも大切なものが、会話にはあるもんね。

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